「特集 つながる、つがる」夏の終わり・収穫を控えたつがる市を巡るルポルタージュ

親父がライバル。息子もライバル。

親父がライバル。息子もライバル。

稲垣地区で、40ha超(!)の農地で米と花を生産している黒滝彰さん(47歳)を訪ねた。
米どころ津軽でもひときわ広大な水田では、黄金色の稲穂が頭を垂れてさわさわと風に揺れていた。
手前の一角には何棟ものビニールハウスが並び、カサブランカを中心に3万球のさまざまな品種のユリやトルコキキョウなどが育っている。

花づくりのきっかけは?「4割減反で、何かやらねばと。小麦をやれば交付金が出たが、それ頼みというのもいやだった。で、稲の育苗が終わった後に花を始めた」
儲かってますか?「以前はね。1本1500円で出荷できたもの。それが最近は300円がせいぜい」と語る黒滝さんだが、表情がにこやかなのは美人の奥さんが寄り添っていたからか。本当に仲がいい。出会いは「家が隣同士だったの」と真希子さん。
お隣といっても壁一枚隔てた都会の団地とはスケールが違う。彼女の兄と黒滝さんが同級生と分かるまで、お互い顔も知らなかったという。田さへない(入れない)という結婚約束だったが、今は進んで花づくりを手伝う真希子さんは「新しい挑戦が楽しい。自分が育てた花を、キレイ!っていわれると心底からうれしくなるの」と言う。

お二人が満面の笑顔になったのは、後継者の話になったときだ。
息子さんは18歳。まだ学校で農業を学んでいる最中で、毎週末にはハウスに寄っていくという。
「農業は決して甘いもんでね。でも、子供の教育にはよかったと思う。いつも触れ合いがあるし、自分でやりたいことがやれる」と語る黒滝さん。
そして、こうも言った。「この農地は親父(堅治さん・73歳)から受け継いだ。親父は独立するとき本家から2町(約2ha)もらい、出稼ぎや土方もしながらそれを20倍にした。親父を超えたいと思うが、超えられん。息子には、せめて50町歩の田んぼを支度(用意)して継がせたいと思っている」
数十年後、息子さんもまた言うだろうか、「いつか親父を超えたい」と。
親父がライバル。息子もライバル。 収穫目前の稲穂の前で。 親父がライバル。息子もライバル。 マリーゴールド 親父がライバル。息子もライバル。 トルコキキョウ
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